こんにちは、PowerPlatformサポートチームの三田です。
本記事では Power Pages のライセンスについて以下の Q1〜Q6 の質問に回答する形で整理します。
- Q1: Power Pages の基本的なライセンスモデル(何をどの単位で購入 / 課金するか)は?
- Q2: 認証ユーザー (Authenticated) と匿名ユーザー (Anonymous) のカウント方式の違いは?
- Q3: 月中で想定より利用が増えた(超過しそう / した)場合はどう判断・対応する?
- Q4: 認証ユーザー数の「ユニーク」判定はどのように行われる?(複数回ログイン時の扱い)
- Q5: 既に Power Apps / Dynamics 365 ライセンスを持つ社内(内部)ユーザーは別途カウント / 課金が必要か?
- Q6: 匿名ユーザー数はどのように一意判定され異なるデバイスやCookie削除時はどう扱われるか?
この記事でわかること
- 現行 Power Pages の容量(Capacity)ベース課金モデルの全体像
- 認証 / 匿名ユーザーの「月次ユニーク」測定基準と非カウント条件
- 既存 Power Apps / Dynamics 365 ライセンス保有ユーザーの扱い(重複課金回避)
- 超過(Overage)したときの対処法
- よくある誤解(旧ポータル Login/Page View モデルとの混同 など)の整理
目次
- Power Pages の基本ライセンスモデル (Q1)
- 認証ユーザーと匿名ユーザーのカウント方式 (Q2)
- 利用が超過しそうまたは超過した場合の対応 (Q3)
- 認証ユーザーのユニーク判定(重複ログインの扱い) (Q4)
- 内部ユーザー既存ライセンスとカウント除外 (Q5)
- 匿名ユーザーの一意判定とブラウザ差異/Cookie削除の影響 (Q6)
- まとめ
- 注意事項(情報の更新可能性)
Power Pages の基本ライセンスモデル (Q1)
【結論】Power Pages は「月次ユニークユーザー数」を軸にした Capacity(容量)ベースのライセンスモデルです。
対象は (1) 認証ユーザー (Authenticated users) と (2) 匿名ユーザー (Anonymous users) の 2 系列です。
サブスクリプション購入(事前割当)と Pay-as-you-go メーター(実使用後精算)が併存します。
【ポイント】
- ライセンス対象単位: 「サイト単位の月次ユニークユーザー数」
- 種別: 認証ユーザー (Authenticated users) と 匿名ユーザー (Anonymous users) は人数を「別々に」数える(互いに混ざらない・合算しない)
- 購入形態: 容量パック (100 認証 / 500 匿名 単位) のサブスクリプション、または Azure 課金の Pay-as-you-go メーター
- 認証/匿名いずれも「その月に 1 回以上アクセスした一意ユーザー」で 1 カウント(基本的には複数回アクセスしても追加カウントされない)
- 旧モデル (ログイン数 / ページビュー) とは測定概念が異なる(ログイン回数ではなくユーザー人数)
【サブスクリプション 容量パック 概要(抜粋)】
- 認証: 1 パック = 100 ユーザー / 月
- 匿名: 1 パック = 500 ユーザー / 月
(複数 パック 積み上げでサイト想定上限を設計。内部的には環境ごとに最小割当値: 認証 25 / 匿名 200)
【よくある誤解】
- 誤解: 「ログイン回数が課金対象である」
- → 正しくは: 月内ユニークユーザー数。1 ユーザーが 30 回ログインしても 1 です。
- 誤解: 「容量パック を買うと未使用ぶんは翌月に繰り越せる」
- → 正しくは: 繰り越し不可(月ごとリセット)。
- 誤解: 「サイト数に比例して必ず追加 Dataverse 容量が必要」
- → 正しくは: 今の Power Pages ではサイトを作るときに Dataverse の容量を新しく買い足す必要はありません(最初からある分で始められます)。
<参考資料>
認証ユーザーと匿名ユーザーのカウント方式 (Q2)
【結論】認証ユーザーは Dataverse の Contact レコード ID で一意判定し、匿名ユーザーはブラウザ Cookie に保持される匿名ユーザー ID で一意化されます。いずれも「その暦月に初めてカウントされた時点で 1」となり再度ログイン(または閲覧)しても加算されません。
【ポイント】
- 認証ユーザー: ログインに成功した Contact 1 件 = 1(同月内複数回ログインは再カウント無し)
- 匿名ユーザー: 匿名ページを閲覧したブラウザ Cookie 単位で初回のみカウント(同月内の複数回訪問は再カウント無し)
- 匿名ユーザーとして数えない主なケース:「テスト用で触っているだけ」「ログインするための画面だけ見た」「機械(検索ロボット)が来た」「その日あとでログインして本人だと分かった」など。(こうした場合は匿名人数を増やさず、必要なら認証ユーザー側だけ数えます。)
- 同一人物が異なるブラウザ・端末・Cookie クリアを行うと別匿名ユーザーとして計上され得る
- 匿名→同日内ログイン移行時は「認証ユーザーのみ」計上(匿名側重複排除)
【よくある誤解】
- 誤解: 「匿名はページビュー合計」
- → 正しくは: ユニーク匿名ユーザー(Cookie ベース)
- 誤解: 「ログインページ(サインイン)閲覧も匿名ユーザーとしてカウントされる」
- → 正しくは: ログインページは非カウント対象
<参考資料>
利用が超過しそうまたは超過した場合の対応 (Q3)
【結論】月次集計は月初にリセットされ日次累積で増加します。想定上限に近づいたら (1) 追加 容量パック 割当、(2) 他環境からの再配分、(3) Pay-as-you-go への紐付け検討 の順に評価することを推奨します。また、超過した場合、即座にサイトが停止したり、超過分の料金を請求されることはありません。
【補足】データが反映されるまでに 1 日程度かかることがあります。
【ポイント】
- 対応オプション: 追加購入・未割当容量の再割当・Pay-as-you-go 化(Azure サブスクリプション)
- 計画: 事前に、季節変動がある場合はピーク月を基準に容量パックの検討
【よくある誤解】
- 誤解: 「超過したら即座にサイト停止や罰金のような追加請求が起きる」
- → 正しくは: 即時停止・即ペナルティ的課金はありませんが、継続超過は早期の容量見直しが必要です。
- 誤解: 「Pay-as-you-go にするとサブスクリプション容量は不要になる」
- → 正しくは: 併用設計可。ベース容量 + 変動部を Pay-as-you-go で吸収するハイブリッドが実務上多い。
<参考資料>
認証ユーザーのユニーク判定(重複ログインの扱い) (Q4)
【結論】同一 Contact に紐づくユーザーが暦月中に複数回ログインしても 1 カウントのみです。判定キーは Dataverse Contact レコード ID で、月初リセット後に再度初回ログインした時点で新しい月の 1 として加算されます。
【ポイント】
- 判定キー: Dataverse Contact ID
- 同月内複数ログイン: 再カウント無し
- 翌月: 初回アクセス時に再び 1 としてカウント
- 旧“ログイン” 課金との比較: 旧 Portals Login (日次ユニーク * 日数) と違い総ログイン回数増加は費用へ直結しない
【よくある誤解】
- 誤解: 「同じ人が 1 日に何回もログインすると、その回数分追加料金がかかる」
- → 正: その月に 1 回でもログインした“その人”は 1 人として数えます。翌月になるまで同じ人が何十回ログインしても増えません。
<参考資料>
内部ユーザー既存ライセンスとカウント除外 (Q5)
【結論】社内の人がすでに以下のいずれかのライセンスを持っていて(同じテナントで付与済み)、会社のアカウント(Entra ID)で Power Pages サイトに入るなら、その人は「Power Pages の認証ユーザー数」には数えません。ライセンスが無い社内ユーザーや会社外の人だけが、Power Pages 認証容量を消費します。
対象となる既存ライセンス(どれか 1 つ持っていれば除外):
- Power Apps per user(1 人で複数アプリ使えるライセンス)
- Power Apps per app(指定された 1 サイト/アプリ分の利用権)
- Dynamics 365 Enterprise ライセンス(該当業務アプリの利用権)
【ポイント】
- すでに 上記既存ライセンスを保持しているユーザー → Power Pages の認証ユーザー容量を消費しない(カウント除外)
- 上記いずれのライセンスも持っていない社内ユーザー / 社外ユーザー(取引先・お客様など) → Power Pages の認証ユーザー容量を消費する
【よくある誤解】
- 誤解: 「社内ユーザーは全員 認証ユーザーとしてカウントされる」
- → 正しくは: 上記の既存ライセンス保持者はカウントされません(容量を消費しません)。
<参考資料>
匿名ユーザーの一意判定とブラウザ差異/Cookie削除の影響 (Q6)
【結論】匿名ユーザーはブラウザ Cookie に保存される匿名 ID で月内ユニーク判定します。別ブラウザ・別端末・Cookie 削除で ID が変われば別ユーザーとしてカウントされます。
【ポイント】
- 判定キー: 匿名 Cookie ID(ブラウザ/端末単位)
- Cookie クリア / ブラウザ変更 / 端末変更: 新規ユーザーとして再カウントされ得る
- 同日匿名→認証ログイン: 認証側のみ残る(匿名で閲覧した後、認証ログインした場合は、認証ユーザーとしてのみカウントされる)
- ログインページ / エラーページ等への訪問はカウントされない
【よくある誤解】
- 誤解: 「匿名はページビュー合計なので画像読み込み等も増加させる」
- → 正しくは: 静的リソースのみではカウントされません。
- 誤解: 「匿名で閲覧した後、ログイン認証した場合は、匿名ユーザーと認証ユーザーで 2 重計上される」
- → 正しくは: 当日内は認証ユーザーとしてカウントされ、匿名ユーザーではカウントされません。
<参考資料>
まとめ
- Power Pages は 認証 / 匿名 の月次ユニークユーザー Capacity モデル。旧 Portals の「Login / Page View」課金とは概念が異なります。
- 認証ユニーク: Contact ID ベース。匿名ユニーク: Cookie ID ベース。どちらも月初リセット。
- 超過が懸念される場合は、追加購入・再割当・Pay-as-you-go を使い分けます。
- 超過してしまっても、即停止・追加請求の心配はありません。
- 内部ユーザーで Power Apps per user / per app / Dynamics 365 Enterprise ライセンス保持者は条件を満たせば認証容量を消費しません。
注意事項(情報の更新可能性)
本記事は執筆日時点の公開情報に基づいています。ライセンス体系・容量定義・ UI 表示・最小割当値などは将来変更される可能性があります。最新情報は必ず公式ドキュメント(Power Pages Licensing FAQ / 管理センター画面 / 最新 Licensing Guide)でご確認ください。
※本情報の内容(添付文書、リンク先などを含む)は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。